インターユース堺・消防プロジェクト(2006~2008)について④
2008年度活動内容
2006年から3か年計画で実施された「住民組織による消防・防災体制作りのモデルプラン作成事業」の最終3年目として、2007年度に作成した3つのプログラムを現地指導者を中心として実施しました。
1.指導者育成のプログラム
① サラワク州消防救助局訪問…サラワク州全体の消防署を管轄するこの消防局を訪問し、ロングハウスへの火災対策を継続して行うことを依頼しました。
② スンガイ・メラ消防署訪問…消防プロジェクトを実施した村を所管するシブの町にある消防署を訪問しました。この訪問には4つのロングハウスから13人の村人が参加しました。消防署の方々と意見交換を行い、効果的な消防の制度を教えていただくことができました。また、訪問後に村の人々と消防署の人々の交流会を開き、両者の関係がより深まったのではないかと思います。
2.初期消火訓練のプログラム
① 初期消火訓練…2006年、2007年度の活動拠点であったルマ・セリの近隣の村で、子どもから高齢者まで多くの住民が実際に消火器を使って、初期消火訓練を実施しました。過去2年間で消火器による初期消火訓練を経験してきた現地指導者がこの村の人々を指導しました。
② パネル作成…初期消火訓練に参加していない子どもたちには、消火器の取り扱いを書いたパネルの塗り絵の色塗りをしてもらいました。子どもも直接参加したことで、パネルや消火器にいたずらをすることもないと思われます。
③ 消火器とパネルの設置…ルマ・リヤンでは、子どもでも取り外せるように、各世帯の入り口付近の地面から約1mの高さに消火器を設置しました。
3.住民の防火意識を向上させるプログラム
① 火災の映像上映…火災の恐ろしさを理解が大切であるため、実際の火災の映像などを村の人々に見てもらいました。
② 意識調査の実施…私たちがホームステイをさせていただいたルマ・セリで、消防に関する住民の意識調査を行いました。
4.意識調査の結果
回答の結果、次の事項を住民が自発的に実施してきたことが判明しました。
・消火器の掃除
・消火器の正しい使用方法の手順の把握
・消火器設置場所の把握
・火災が多い6月に消火器の点検実施
・2007年度作成の防火ルールの把握
・新たなルールの追加
・近隣の村を含めた消防ミーティング
これらの調査結果から、「防火意識の向上」、「消火器の使用法の把握」、「現地指導者の成長」が見られ、私たちが実施してきたプログラムの内容が住民に浸透していることが確認できました。私たちが訪問した時だけの行動ではなく、私たちの帰国後に住民たちが自主的に行動し、形にしていました。つまり私たちが目的としてきた、『自立支援』と『人材育成』が達成できたといえます。
5.これからのロングハウスの消防・防災体制
インターユース堺が3年間行ってきた「住民組織による消防防災体制づくりのモデルプラン作成事業」は2008年度で終了しました。これからはAVC及びSCSが中心となってイバンの人々へ消防に関する支援を行っていくのだが、その中で重要になってくるのがイバンの人々と現地の消防署との関係です。
今年度、現地消防署に訪問した際にロングハウスで「消防委員会」を設置し、日本円で約1,000円の登録料を消防署に払うと、消防署から消防に関する資料及び講習を受けることができ、その講習を受講すれば、消防に関する知識やトレーニング内容を他の村に伝える資格が与えられることが判明しました。つまり、この制度を利用すれば、イバンの人々は現地の消防署からの直接的な支援を受けることができるのです。
しかしながら、こういった制度があることはイバンの人々にはほとんど知られておらず、消防署も制度をイバンの人々に伝えきれていないというのが現状でした。その中で、私たちが地域で消防活動のリーダーとなる自覚をもった13人もの村人と共に消防署に訪問したことで、イバンの人々にこの制度が伝わったということは大変大きな収穫でした。一緒に活動してきた現地の指導者は「早速村で消防委員会を設置して、消防署に登録を行う。」とおっしゃっていました。
これまでイバンの人々は、消防署に対して「自分たちからは遠い存在である。」反対に消防署はイバンの人々に対して「どうアプローチしてよいか分からない。」といった「見えない壁」が存在していました。しかし、私たちの消防プロジェクトの活動を通じて、イバンの人々と消防署の間で直接的な意見交換や交流をもつことが成功し、両者の間にあった「見えない壁」が取り払われるきっかけとなりました。このことにより、私たちインターユース堺が現地での活動を終了してもAVCとSCSの支援を受けながら、現地の消防・防災体制は今後もたくさんの村や人に広まっていくことが期待できます。
次回はプロジェクト終了後のイバンでの消防活動について報告したいと思います。
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