インターユース堺・消防プロジェクト(2006~2008)について③

2007年度活動内容

 

2006年度の調査と活動計画をもとに、2007年度はイバンの村々に消防・防火体制を広めるための効果的なモデルプランの作成を行いました。

現地NGOであるSCSの事務局長アジャさんからの情報や現地の要望を聞き、AVCの荒川さんに現地で実施が可能かどうか調査していただきました。

さらに、専門的な見地から堺市消防局の植野消防司令に確認していただき、3つのプログラムを作成しました。

 

1、指導者育成のプログラム

 サラワク州の州都クチンにあるサラワク州消防救助局をイバンの人々と一緒に訪問しました。ここでは、マレーシアやサラワク州の消防組織や課題について教わり、ロングハウスの火災対策について学ぶことができました。また、消防救助局職員のみなさんとイバンの人々、私たちが交流し意見交換を行うことで、普段イバンの人々が伝えることができない思いを消防救助局の人々に伝えることができました。

 翌日、活動の中心となる村であるルマ・セリに最も近いスンガイメラ消防署にもイバンの人々と一緒に訪問しました。消防署ではロングハウスの火災に対する教育プログラムを作成しており、そのプログラムが成功した実例もあることを教わりました。

 

2、住民の防火意識を向上させるプログラム

①2006年度海外派遣報告集を全世帯に配布

 報告集、消防プロジェクトを英訳したものを配布しました。ほとんどが日本語で書かれているので、イバンの人々は読めないにもかかわらず、消防プロジェクトのカラーページの写真等を熱心に見ていました。

②過去の経験を質問形式で聞き「気付き」を導く

 ルマ・セリの人々は大きな火事にあったことはないが、この25年間で7回のぼやを経験しています。私たちが質問形式でぼやの原因などを聞き、村の人々が事実を話し、火事の原因や対策に自ら気付いてもらうことで、住民全体の防火意識の向上を図りました。

③現地消防士のプログラム実施

 スンガイメラ消防署の消防士が、私たちと一緒にルマ・セリに同行し、村で教育プログラムを行いました。ロングハウスの火事の原因、村としてのルールの必要性、消火器の設置場所、消火器の中身の入れ替えが消防署でできることなど、約1時間のプログラムを実施しました。さらに、ホームステイの最終日に、2人の消防士がわざわざ休みをとって再びルマ・セリに来てくれました。イバンの人々は消防署に対して近寄りがたいというイメージを持っていたのですが、今回の2度にわたる訪問と交流で、その壁が取り払われ、イバンの人々と現地消防署のつながりができたことは、たいへん有意義でした。

④火災経験者・防火防災活動実践者の講話

 実際に火事を経験した村の人々に、ルマ・セリに来てもらい、火事の恐ろしさや、その後の火災対策について話していただきました。

⑤火災の怖さに関する啓発活動

 映像を使った啓発活動を行いました。日本の火災現場、トラッキング、水蒸気爆発、食用油やタバコによる火災の映像を見ることにより、火災の怖さや日頃使っている物が火災の原因となる危険性を伝えました。

消火器の使用方法および管理方法の紹介

 植野消防司令による消火器の使用と管理方法の説明を行いました。日本の法律を参考にし、現地に合った使用法および管理法を紹介しました。簡単なメンテナンスの方法を実演し、村の人々にも実際に消火器を持って確認する練習をしていただきました。

住民組織による防火のためのルールづくり

 タバコやガスコンロに関する取り決めと、消防・防火体制の組織に関する「ルール」を作成しました。その一部を紹介します。

 

 Ⅰ、ロングハウスの各世帯を見回り、火の消し忘れなどがないか点検。見回りは13回実施する。

 Ⅱ、消火器を点検する。

 Ⅲ、定期的に消防に関する企画を実施する。

 Ⅳ、消防当局との親密な連携を心がけ、必要な時に協力を要請する。

 

3、初期消火訓練のプログラム

①消火器の寄贈

 ルマ・セリに31本の粉末式消火器、3本のガス式消火器、他の村にも2本のガス式消火器を現地で購入し寄贈しました。粉末の詰め替えは、現地の消防署で可能であることを伝えた。

②消火器による初期消火訓練

 村のだれでもが消火器を取り扱い、初期消火できるよう消火器を使った初期消火訓練を行いました。35世帯を1班とし、合計7回の訓練を実施しました。グループに分け少人数で行うことにより、より多くの村の人々が消火器に触れることができました。

③パネル作成

 消火器の使用方法をイバン語と絵で描いた物を準備し、イバンの子どもたちに色鉛筆で塗り絵をしてもらいました。子どもたちもプログラムに参加することにより、今後、消火器にいたずらすることもないと思います。

④消火器とパネルの取り付け

 いつでもだれでも取り外し使用可能なように、廊下に面した各世帯入り口付近の床から約1mのところに消火器とパネルを設置しました。

 

4、2008年度にむけて

 2006年度の調査によって、ロングハウスでの火災をなくすためには、住民が高い防火意識を持つこと、住民が初期消火の方法を知っていることが重要であることが判明しました。また、消防防災体制をイバンの人々が自主的に広めていくためには、住民組織の指導者が必要です。これらをもとに2007年度は3つのプログラムを作成しました。

消防プロジェクトの最終年度となる2008年度は、プロジェクト終了後も消防防災体制がイバンの人々によって広まっていくために、「現地消防とイバンとの連携強化・指導者の育成・自立」をテーマに活動することが決まりました。

次回は2008年度の活動について紹介したいと思います。

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インターユース堺・消防プロジェクト(2006~2008)について②

 

2006年から2008年にかけてインターユース堺が実施した国際貢献活動「住民組織による消防・防災体制づくりのモデルプラン作成事業」の2006年度の活動について紹介します。

 

2006年活動内容

 

ロングハウスの現状を把握するため、「ルマ・パンジン」(2006年当時の名称はルマ・ミット)と「ルマ・セリ」という2つの村を調査しました。日本の消防・防災体制について紹介し、住民の消防・防災意識を向上させるプログラムと訓練を実施しました。

 

(1) 2つの村の調査

「消防士による専門的な調査」「住民と団員による調査シートを使った調査」「住民からの聞き取り調査」を行いました。調査の結果、火災の主な原因として、タバコ、ガスコンロ、オイルランプの取り扱い方法に問題があることがわかりました。

(2) 住民の消防・防災意識を向上させるプログラム

住民に、火災の恐ろしさを今以上に理解してもらうために、ロングハウスの廊下で日本の火災に関するアニメーションや啓発ビデオをプロジェクターで上映しました。

(3) 避難訓練

「発見者が住民に大声や笛で知らせる」「安全な場所にすばやく避難する」「点呼する」など、私たちが初めにデモンストレーションを行い、その後住民とともに避難訓練を実施した。

(4) 集団での消火訓練・初期消火訓練

ロングハウスにおける有効な初期消火方法の調査として、バケツリレーと消火器を使った消火訓練を住民とともに実施しました。消火器は事前に町で購入し準備したものを使い、使い方の指導を行いました。多数の住民が実際に消火器を使って訓練をすることができました。

 

これらの活動通じて、2007年以降の活動の方向性が見えてきました。

私たちが訪問した村のひとつであるルマ・セリにはアジアボランティアセンター(AVC)の荒川さんや現地NGOSociety of Christian ServiceSCS)の活動により消防・防災の為の住民組織ができていました。しかし、2006年の段階では、住民組織として動き出しておらず、私たちインターユース堺がイバンの人々とともに考え、話し合い、住民がこの組織を自ら動かせるよう支援し(自立支援)、消防・防災の指導ができるリーダーを育成(人材の育成)することが重要であると判明した。

また、ルマ・セリ周辺には9つのロングハウスがあり、9つの村の村長が集まる会議なども行われて、地域の村は互いに深く繋がっています。2007年度以降は、ルマ・セリを消防プロジェクトの発信地にして、ここで育ったリーダーが、他の村に伝え、内容が地域に根付くことを最終的な目標として活動することが決まりました。

 

次回は2007年度の活動について紹介したいと思います。

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