迷いの介護休暇(第6回)松本敏子さん
半月間、家の片付けと病院通いと、今まで滞っていた書類手続きやリフォーム工事の相談で明け暮れた。時間ができたら読もうと思い、箱一杯持って行った本や資料を手に取ることもできない日々だった。
母の未だなかなか動かない右手に加えて、足にも痛みが出てきた。5月の連休明けに母を堺に置いて高知へ帰る予定をしていた。当日まで迷った。迷いに迷った挙句、帰る選択をして、自分が我が家に帰ったとたん、20年間住み慣れた家のトイレのスイッチを迷った。
自分を笑い、母を笑えないと思った。人間の感覚の不思議を思った。同じことを続けているとそれに対応する力が勝り、年を経るにつれ、感覚が切り替わる力がなくなるのだなと。
1ヶ月も仕事をせず、家にいたなんて今までなかったことだ。でも、これからもずっと家にいる。休暇だから。介護休暇ってもっと楽しいものだと思っていた自分に苦笑した。
パソコンのメールを開けて、友人教師のトンデル3年生達との格闘の文章を読んだ。去年担任していた5年生とほぼ同じような行動を読むにつけ、去年のレポートを早くまとめたいと思うと同時に、格闘している元気な彼女の文章に元気をもらえた。元気な人と一緒にいると元気になれる。元気な気持ちに触れると元気になれる。(つづく)
(ほーぷレター2013年3月号より)
~松本 敏子さん ご紹介~
ホープの利用者さまのお嬢さまです。高知在住。お母様はひとり暮らしで、介護サービスを利用中。松本さんは、1年間の介護休暇を終え、現在、仕事に復帰。