施設見学報告「通所介護事業凡」(徳谷好美)

堺市美原区の木材団地の近くの住宅街にあります。平屋で入口の門には「凡」と書いた表札があるだけですが、それが細川さんのやりたいこだわりのデイを感じます。どこか、自分の実家に帰って来た様なたたずまいです。玄関に入るまでに何段かの階段がありますが、手すりだけであえてスロープにはしていないそうです。審査の時はスロープの鉄板を設置したそうですが・・・普通のお家を出来るだけ余計な改装せずに自然に利用者がすごせるようになっていました。
その日のスタッフは3人で、細川夫妻、2時くらいまでのスタッフが1人、午前中に看護師1人で、看護師は食事準備もするそうです。その日の利用者は3人で、お一人は静養室で、お二人の男性はリビングでそれぞれの位置に座り、まるで自分のお家でくつろいでおられるような感じでした。リビングが(フロアでなくリビングなんです)どこにでもある家庭のリビングで、そこにはゆったり時間が流れていました。特に何をすると言った決まりはなく、細川夫妻の子供さんも時々はちびっこスタッフでゲームなど一緒にするようです。
リビング以外に私たちが通された和室は形の違う座りやすい椅子が応接セットになっていて、縁側があり、ここも落ち着いた感じです。時々利用者がくつろがれているそうです。隣の和室は静養室になっています。デイサービスと言う決まった言葉を使いたくないようなぬくもりのある場所です。細川さんのお話はざっくりしているように聞こえますが、その言葉と反対にしっかりと利用者と向き合っておられるのが凡の中に感じます。デイで一年たちましたが、細川さんの凡はまた自分が原点に戻る事を教えてくれるデイでした。

(ほーぷレター2013年9月号より)

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「宅老所よりあい」を見学して(6) 中島紀子

「第3宅老所よりあい」は、大きなバス通りからちょっと入った閑静な住宅街の中に残る異空間「よりあいの森」の中にあります。この森は、他者の老いに関わり、自分の時間を使うことで、安心を創ることに共感した有志が集まり結成された『「よりあいの森」を創る会』が音頭をとって資金集めをし、集い、もちより、わかちあいながら、今も創り続けられています。

2012年11月の初めての見学から半年間の間に、この森の中にある「よりあいの森いちにちカフェ」に何度かおじゃまさせていただくことができました。ホープの元スタッフで、私の尊敬する友人の中西さんがきっかけを作り、導いてくれて、ホープのデイのスタッフ、訪問のスタッフとその家族、私の母、義母、叔母、母の友人…そんな人たちがこのよりあいの森を訪れました。なかなか社会とうまく関われずそのきっかけを待っている私の弟が、スイーツ作りが好きで、自作のパウンドケーキをよりあいカフェで出していただくという機会もいただきました。人と人とをつなぐ、不思議な「何か」を持っているところです。

「宅老所よりあい」は、2年後に、この森の中に新しく、25人定員の特別養護老人ホームを作ろうとしています。お金が余っているから、土地が余っているから、人が余っているから作るのではないのです。そこに必要があるから、人生の最後のときを満足して死んでいく人のそばにいたいから、なんとかして、お金をより集め、自分の時間と能力を差し出し、ときには何かを犠牲にして、それでも楽しんで、新しいものを創るのだと思います。(終わり)

(ほーぷレター2013年7月号より)

Filed under: ほーぷレター,施設訪問 — 55hope 11:50 AM  Comments (0)

「宅老所よりあい」を見学して(5) 中島紀子

福岡の「宅老所よりあい」を見学した帰りの飛行機の中で、第2宅老所よりあいの所長である村瀬孝生さんの著書『宅老所よりあいの仕事-看取りケアの作法』を読みました。看取りケアとはどういうものかまったく経験のない私に、ああ、私もできることなら体感してみたいと思わせたその本の一部をここに紹介します。

―――僕たちはよしおさんの死に立ち会った。そこにあったのは深い悲しみだけではない。むしろ、その悲しみを超える喜びがあった。職員の一人は、「いま僕は悲しいけれど、喜びに満ち溢れています」と言って泣いた。

僕は「これで生きていける」と思った。そう思った瞬間、自分でも気がつかぬうちに危うさを抱えていたことを知った。僕はこれまで、どこか人を信じられないで生きてきたのかもしれない。けれど、人は信じるに値するものなのだ。そのことが胸に深くおちた。見も知らぬ他人の顔を見てもうれしくなった。こんな境地は初めてだった。「これで生きていける」。

同時に、第2よりあいの組織としての未熟さも露呈した。よしおさんが亡くなると職員の数名はやめると思っていた。よしおさんの求心力で職員集団が成り立っていることは感じていた。予見通り二人が辞めた。第2よりあいとしての組織的課題も、よしおさんは教えてくれた。仕事として成立させなさい。そう言われているように思えた。―――(次号につづく)

(ほーぷレター2013年6月号より)

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「宅老所よりあい」を見学して(4) 中島紀子

生死に関わる覚悟まで含めた本気の取り組みができるかどうか…私の判断で、言葉で、人を死に至らしめることがある。それでも尚、人と関わっていきたいと思えるのか。本気でやっている人のところには人が集まる。何か助けになりたいと思う。宅老所よりあいも多くのボランティアさん、地域の人が人的、物的、金銭的な面で運営を支えています。第一宅老所の中島さんが第三宅老所への移動の車の中で話されました。「ボランティアさん達にいっぱい助けてもらっていますが、何のお返しもできません。ただ、よりあいに関わっていることで、自分が何か困ったときに、情報が入ってくる…例えば、あそこのお医者さんがいいよとか、あの人に相談したらいいよとか、そんなことくらいですよねえ。」…そう、今すぐお返しはできません。でもここに関わっていたらいつかいいことあるよ。ホープもそういうところになりたいなと思います。

後日ですが、福岡市南区桧原(ひばる)にある第二宅老所よりあいも見学させていただきました。第二宅老所よりあいは、地域の人を巻き込んで、スタッフが細部までを話し合って、一から建てた施設です。出来上がる様子を見ていた近所の人は、「そば屋か?」と思っていたとか。ちょっと山小屋風の、新築とは思えない風格のある建物です。吹き抜けになった高い天井、山を見渡せる眺めのよいデイルーム、真ん中にでんと構えたオープンキッチン、回廊式の廊下の外側にお泊りの小部屋がいくつかあり、下の方に小窓がついていて、中の様子をほんのりと伺える障子で仕切ってあります。この小部屋で必要とされる方には看取りまでを行います。看取りをするときには、スタッフの方々は合宿をされるそうです。(次号につづく)

(ほーぷレター2013年5月号より)

Filed under: ほーぷレター,施設訪問 — 55hope 4:38 PM  Comments (0)

「宅老所よりあい」を見学して(3) 中島紀子

棟続きのグループホームの方へ移り、大きな銀杏の木のある中庭に面した居間で、開業当初から代表の下村さんとともに運営に携わってきたスタッフである中島さんのお話を聞きました。

中島さんも、この後行った「第3宅老所 よりあいの森」で迎えてくれた若いスタッフ後藤さんも、口を揃えて言われたのは、宅老所よりあいの介護に対する考え方「介護の専門職として、お年寄りとその家族を支える」ということ。代表の下村さんの著書を読むとお年寄り一人一人、またその家族との関わり方の深さに圧倒されるのですが、私たち介護職は、決して立ち位置を間違ってはいけないと言われます。私たちは家族の代わりではないし、ボランティアでもないと。22年の実践の積み重ねの上に培われた理念が、スタッフの方、お一人お一人に浸透していることにとても感動しました。

考え方の共有の方法として、例えば会議はどのようにされているのかお聞きしました。デイの毎日の終礼の他に、月2回、夜に会議を行っているそうです。グループホームはまた別に行い、全体でも行う、利用者についている人は出られないが、その他のスタッフは全員出席とのこと。各スタッフ利用者担当があり、それぞれがケアの仕方についての提案をして話し合い、ケア方針を決めていくそうです。宅老所よりあいの主催するセミナーや勉強会もあり、毎日、24時間営業の日々の仕事をこなすことだけでも相当なエネルギーを使うでしょうに、それ以上の向上心を持ち続けているパワーの源はなんだろうと考え入りました。 (次号につづく)

(ほーぷレター2013年4月号より)

Filed under: ほーぷレター,施設訪問 — 55hope 5:11 PM  Comments (0)

「宅老所よりあい」を見学して(2) 中島紀子

中に入ると、天井の高い真ん中の部屋に10名程のお年寄りがちゃぶ台を囲んで輪になって座っておられました。部屋の周りを縁が囲む回廊式の構造になっていて、縁をはさんで柔らかな光が入る日本式の建物の良さを感じさせます。お年寄りの間には、スタッフの方が2名程おられ、緑茶を入れておられました。

朝10時過ぎという時間帯でしたが、ほとんどの方がこっくりこっくり、うつらうつら、まどろんでおられる状態です。介護度でいうと要介護3~5という重度の方がほとんどということで、比較的お元気な方が多いほーぷのデイサービスとは雰囲気が違うなと思いました。それでもよくある病院や施設の雰囲気とは違うのは、このうつらうつらしながらの居姿がちゃんと存在感を示している感じがするのですね。

スタッフの方が、「代表の下村の趣味で・・・」と言われる年代物の骨董家具が配置された、昔ながらの日本の家に、介護の必要な方が過ごしやすい機能的な配慮がさりげなくされている空間の居心地の良さと、隅々まで行き届いているであろう、スタッフの方のお年寄りに対する質の高いケアがその支えになっているのでしょうか。この場所の主はこのお年寄りの方々であるという静かな主張を、ぽっと入って行ったよそ者の私たちにも感じさせるような、そういう空気がここにはあると思いました。 (次号につづく)

(ほーぷレター2013年3月号より)

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「宅老所よりあい」を見学して(1) 中島紀子

2012年11月28日(水)、デイサービスほーぷのスタッフを中心に5名で、福岡県福岡市にある「第一宅老所よりあい」、「第三宅老所よりあい」を見学させていただきました。

「宅老所よりあい」は代表の下村恵美子さんが中心になって設立して22年、今では全国に広がった宅老所・グループホームの元祖として知られています。

「第一宅老所よりあい」は、定員12名の認知症対応型デイサービスで、自費による泊りサービスもおこなっています。泊まりサービスはデイサービスの利用者のみが使えるそうです。同じ棟続きに定員5名のグループホームも併設されています。

外観は、普通の住宅地の中に普通にある民家というか古民家の装いです。ガラガラッと開ける古い引き戸の玄関の上に「よりあい宅老所」と木彫りの味のある看板がかかっています。玄関前にみかんが無人販売されていました。後で聞きましたが、スタッフのご実家で作っているみかん(七山[ななやま]みかん)を設立の頃から販売しているそうです。毎年このみかんを目当てに訪れる方もいらっしゃるとか。このみかんの販売益も大事な運営費のひとつになっているそうです。

玄関を入ると右手に調理場があって、3名程のスタッフが食事の準備をしておられました。立ち上る湯気に朝の光が透け、玄関を入った時から食欲をそそる匂いが立ち込める…「いいなあ、いいなあ。」と思いながら中に入りました。この調理スタッフはボランティアの方です。 (次号につづく)

(ほーぷレター2013年2月号より)

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