迷いの介護休暇(第15回) 松本敏子さん
介護休暇がくれたもの
初めて月給をもらったとき、こんな好きな仕事をして、給料をもらっていいのだろうかと感じた。「給料もらわなくても先生をやっていたい」と思っていた。今でも、私の周りにそんな若者はたくさんいる。しかし、そんな考えの人だったのに早々に教職を離れてしまった人もたくさんいる。教師だけが人生じゃないけれど、学校や教育現場がそういう状況であることがとても寂しくてならない。人間、がんばれる年齢と、もうがんばれない年齢があることもわかってきた。それはどうやらその人の生き方にかかっているらしい。
結婚をする時、母は「女は絶対に職を捨てるな」と言った。「お金がないと、しなくてもよい喧嘩をせねばならなくなる」と。恋で盲目だった当時は理解できなかったその言葉は、歳を経て、実感できるようになった。お金がなかったら喧嘩になっていたであろう場面に多く遭遇した。お金で解決できる余裕もありがたかった。
介護休暇に入ってすぐの春、半べそかいて訪ねて行ったら「悩んだときはいつでもおいでよ」と優しく言ってくれた喫茶店のマスター。「相談にはようのらんけど、話を聞くだけやったらいつでもするで」自分が悩みぬいた過去がなかったかのように、奥さんの横で笑ってくれた。
いつも電話やメールで励ましてくれた友人達、研究会仲間。近隣の人や親戚やディのスタッフの方達&一年間独り暮らしを満喫しきったダンナちゃん。一人で生きているのではないというのはこういうことなのかとドラマの主人公のように感じられた。 (つづく)
(ほーぷレター2013年11月号より)
~松本 敏子さん ご紹介~
ホープの利用者さまのお嬢さまです。高知在住。お母様はひとり暮らしで、介護サービスを利用中。松本さんは、1年間の介護休暇を終え、現在、仕事に復帰。
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